78CDR-3158
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調作品64
シドニー・ビーア指揮
ナショナル交響楽団
デニス・ブレイン(第2楽章のソロ・ホルン)
英 DECCA AK1032/6
(1944年6月8日ロンドン、キングスウェイ・ホール録音)
イギリス・デッカ社の録音技術者アーサー・ハディ(1906-1989)は第2次世界大戦中の1943年に、デッカ社がイギリス政府から委嘱をうけた軍事研究の実験成果を基に、当時SPレコードの50Hz-7.5kHzだった録音帯域を、一挙に15kHzまで伸長させることに成功した。ハディの新方式の最初の録音となったのがこのチャイコフスキーの第5番だった。指揮者はナショナル交響楽団の創立者シドニー・ビーアで、1944年6月8日ロンドンのキングズウェイ・ホールで行われた。ホルンの名手デニス・ブレイン(1921-1957)が第2楽章のソロを受け持っている。バランス・エンジニアはハディ自身が担当、厚みのあるサウンドは後にハイ・フィデリティ録音の代名詞となったfull frequency range recording(ffrr)の最初の録音であることを十分に納得させられる。このSPレコードは1944年(昭和19年)12月新譜として発売された。大戦末期の厳しい状況下でありながら、それを感じさせない優れた演奏である。